写真療法とは

【写真療法とは】

 

人の心や身体に良い影響を期待して実施する実践的な写真活動(セラピーとしての写真活動)をさします。なお、写真を利用する様々な活動には、写真療法と似ているものの、その目的ごとに異なるものが種々ありますので留意が必要です。詳細は近隣領域との相違点のページにてご確認ください。

 

【写真セラピーという名称について】

 

人の心や体に良い影響を期待して実施する写真活動には様々な呼称(写真療法、写真セラピー、フォトセラピーなど)が存在し、その手法や基本原理、実施目的や対象者は提唱者ごとに異なります。当協会では、代表理事の酒井貴子が開発した手法を「写真セラピー」という名称で実践し、以下の通りその内容を定義します。

 

【定義づけ】

 

写真セラピーは、訓練を受けたファシリテーターが第3者に対して実施するプログラムであり、以下のとおり定義づけします。

 

(1)写真の持つ特性(記録性と投影性)を利用して、

(2) 芸術療法の考え方に丁寧に寄り添いながら、

(3) 生活の質の向上や心身によい影響をもたらすことを期待して

(4) 第3者に対して実施する主体的、実践的な写真活動です。

 

その行為は写真を撮ること、撮られること、撮った写真を見ること、更には撮った写真を加工して楽しむこと、語ることなどを含み、対象者は子供から高齢者まで、一般人を含めて医療、福祉、教育、行政、企業分野などの多岐にわたります。 そして他者に対して写真セラピーを実施する実施者をファシリテーターと呼びます。

 

【基本原理】 NEW!!

 

当協会が提唱する写真セラピーは、臨床心理学(芸術療法およびカウンセリング心理学)を基本原理としています。そのプロセスは、写真を撮る、撮られる、撮り合う、見る、プリントする、コラージュする、思いを語る、という非常にシンプルではありますが、様々な写真の効用を活用した、複合的なセラピーの要素を包含するプログラムとなっています。そして写真セラピーの効果をもたらすのに不可欠なのが、訓練を受けた第3者(ファシリテーター)による様々な【関わり技法】です。

 

写真セラピーにおいては、ファシリテーターが人の心の自己治癒力や自己回復力を促す役割を果たします。それは、心理療法におけるセラピストやカウンセリングにおけるカウンセラーの役割と同じく<安全、安心な自己表現の場を提供し>、<相手の思いを出来る限り正確に、かつ共感的に聴く努力をし>、<表出された思いをありのままに受けとめ>、<あなたを理解しようと努力していますよ、共感的に聴いていますよ、という内容の言語、非言語的なメッセージを相手伝えること>を基本としています。つまり、ファシリテーターの存在なしに写真セラピーのワークショップは成立しません。

 

【期待する心理的効果】

 

当協会が提唱する写真セラピーでは、大きくわけて、以下のような2つの心理的効果を期待します。

 

(1) 作業療法およびクラフト的な要素:写真を撮ったり撮られたり、撮った写真を見る、コラージュするなど加工して楽しむ、飾る、贈るなどの創作活動を通して、自信や意欲、自律心などの生きる力を育むこと

 

(2) 心理療法的な要素:写真の投影性(写真には被写体に重なるようにして撮影者、観賞者の意識、無意識の情動が投影される)を利用して、作品に表出する撮影者、観賞者の心の声をありのままに受け取め、共感的に寄り添うことにより、自己洞察を深め、自己発見、自己回復のプロセス(本来の自分らしさを取り戻すこと)を促すこと

 

【対象者と果たす役割】 

 

(1) 医療分野:病院や終末期医療施設などで、闘病中のリクレーション、癒しや生きる力を育むセラピープログラム、アイデンティティーの統合を目的としたライフレビュー、グリーフ(悲嘆)ケアなどとして実施されます。

(2) 福祉分野:障害を持った人や高齢者を対象に、障害者施設、高齢者施設施設などで、自立活動、リクレーション、健康増進プログラムなどとして実施されます。

(3) 教育分野:創造性やコミュニケーション能力育成、自信や意欲の創出など、生きる力を育むプログラムとして学校や院内学級、フリースクール、養護学校等で実施されます。

(4) 一般人:一般の人や社会人、子育て中の親を対象に、ストレスケア、メンタルヘルス、自己啓発プログラムなどとして実施されます。

 

【ご注意】

 

うつ病や統合失調症などの精神疾患で服薬中の方のワークショップ参加やファシリテーター養成講座への参加はご遠慮頂きます。また心理療法やカウンセリングを受けている方の場合も、担当医・カウンセラーにご相談の上、参加の判断をなさることをお奨めします。

 

                            著・酒井貴子 (2012)

(2017一部改訂)

(2019一部改訂)

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